メルカリがtoCプロダクトの日本の先駆者だとすると、toBプロダクトの雄がSmartHRです。2022年10月時点では未上場ですが、国内ユニコーン企業として1,000億円を超える時価総額を誇る、言わずと知れたプロダクトドリブンなカンパニー。
実績十分なプロダクトを持っているためSmartHR社のプロダクトマネージャーに転職したいという方も多いと思いますが、SmartHR社の選考はメルカリに負けず劣らずで難易度が高いのも事実です。本日は2022年10月現在で募集されている職種要件や平均年収を元に、求められる業務内容・採用難易度・選考フロー・想定年収を解説していきます。
目次
1.SmartHRのプロダクトマネージャーとは
SmartHRではテックブログ「SmartHR Tech Blog」を運用しており、その中でプロダクトマネージャー職を対象した採用や仕事内容に関する紹介をしております。テックブログの中で紹介するというだけあり、「プロダクト組織」の中にプロダクトマネージャーのポジションがあることが分かります。
記事の構成はミッション・バリュー・サービスビジョン、会社紹介、プロダクト、働き方、プロダクトマネージャーについてという順番で説明されています。
SmartHRにおけるPMの役割は、「何を作るか」「なぜ作るか」の2点に責任を持ち、開発チームと協働しながらユーザーにプロダクトを届けることです。
https://tech.smarthr.jp/entry/product-manager-matome
多くの企業のPMに求められることですが、WhyとWhatに関する責任と、開発チーム(デザイナー含む)とのコラボレーション、そしてユーザーへのデリバリーが求められるとのことです。メルカリ社の場合、「お客さまにとって必要な価値を定義し、その価値を正しく提供する人」と”お客様”という言葉が出てきていたのが特徴でしたが、SmartHRは誰ということは特に記載はありません。恐らく業務系のtoBプロダクトであり、場合によっては社内システムや外部公開用のAPIなど、プロダクトのユーザーがお客様とは限らないのでしょう。
SmartHRのPdMは優秀な方が多いので、情報発信の量も多いです。在職中の現PdMの方々が書いた記事も参考にしてみてください。
PdMとPMMはどうやって協働しているか?ミッション・体制・KPIから語るSmartHRの棲み分け方
PdMとはフラットな立場で意思決定する仕事:SmartHR VP of Product・安達隆に聞く、PdMという職種に求められるもの
1-2.PdMとPMMの違い
SmartHR社のPM職の特徴として、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)が存在します。メルカリ社やfreee社などでも採用しているPMM制度ですが、特にSaaSを提供するプロダクト企業では重要なポジションになってきています。
”マーケティング”というワードを聞くと、広告をしているのかなとか、商品企画をしているのかなというイメージを持ちますが、PMMはあくまでもPMの1職種です。そのため「すべては顧客とプロダクトの成功のため」というのが前提にあり、よりカスタマーに近い領域での仕事に集中しているのがPMMの役割というイメージです。SmartHR PMMチームのnoteを参照すると、SmartHR のPMMでは以下に記載の役割を担っているようです。
PMMは、新規顧客に対しては、マーケティングやセールスチームと協働してプロダクトのメッセージをつくり、発信・販売していき、また既存顧客に対しては、カスタマーサクセスとともに顧客の課題を解決するためのプロダクトを考え、市場要求仕様書(MRD)をつくりPMに伝える、といった役割であると整理できます。
https://note.com/shige/n/n609d01e01aa7
noteより借用している画像を見ると、よりプロダクト開発に重きを置いているのがPM(プロダクトマネージャー)、より顧客へのデリバリーやサクセスに重きを置いているのがPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)という棲み分けであることが分かります。PMMと言っても市場要求仕様書を作っているとのことなので、プロダクトづくりに関与できることも分かりますね。
2.SmartHRで募集中のプロダクトマネージャー職
SmartHRのプロダクトマネージャー募集ページによると(SmartHR Tech Blog内にリンクあり)、募集しているPdM職は1件のみで「プロダクトマネージャー」のみです。PMMという職種が存在すると前述しておりましたが、PMMは現在募集していないのでしょうか?
現在の募集ポジションは?入社時の状況やご本人の適性、希望を踏まえてアサイン先を決定します。
SmartHRのプロダクトマネージャー職にご興味をお持ちの方へ|採用に関するFAQ
状況の変化が激しいため、担当プロダクトを決めて採用することは基本的にありません。もし特に関わりたいプロダクトがある場合は、選考時にお知らせください。
テックブログ内の記事では、2022年10月時点では上記のように「入社時の状況と本人適性・希望を踏まえたアサイン」と記載があります。そのためプロダクトマネージャー募集ページにも1件の「プロダクトマネージャー職」しか記入がありません。
これは筆者の推測になりますが、職という箱を定義して人を配置・採用するというメルカリ社と比較すると、やや採用する人によって組織や職を配置していく傾向が見られますね。まだ未上場のメガベンチャーということもあり、柔軟に動ける人が求められるということを意図しているようにも見えます。
2-1.プロダクトマネージャーの募集要項
それでは募集要項の詳細を見ていきましょう。前述の通り、SmartHRでは「プロダクトマネージャー」1職種での募集となっているため、その内容に沿って解説していきます。
業務内容
・プロダクトビジョンや目標、ロードマップの策定
・開発アイテムの起案・優先順位付け
・ユーザーインタビュー
・要件定義
・メトリクス設計・データ分析以下のような業務はプロダクトマネージャーの役割に含まれない
SmartHRのプロダクトマネージャー募集ページ
・事業計画の策定や予算の管理
・開発メンバーの人的マネジメント
・キャンペーン設計や広告出稿などのマーケティング業務
・サービスサイトやLPなどのウェブディレクション業務
・ヘルプページやユーザー向け学習コンテンツの作成
プロダクトマネージャー経験のある方はおなじみの業務内容と思われますが、プロダクトビジョン策定からロードマップを策定し、プロダクトバックログの優先順位をつけながら、日々のプロダクトのメトリクスを測定していきながら、ユーザーやプロダクトの課題を定義していくのが役割です。アサインされるプロダクトや職によって、ユーザーインタビューにかける時間が長いや、要件定義から設計まで入るなどはあると思いますが、プロダクトの成功に責任を持つPMに必要な期待値を任せられると言えるでしょう。
またSmartHR社の募集要項の特徴として、「プロダクトマネージャーの役割に含まない」という記載があります。売上管理やエンジニアマネジメントを求める企業も中にはあります。SmartHRでは事業戦略は事業責任者(中にはCOOなど)が責任を持つので関与はするが決定の責任はなく、その事業戦略に基づく・リンクするプロダクトビジョンから落として作っていくということがPMに求められる役割と言えるでしょう。プロダクトの成功に向けて集中できる環境があることも想像できます。
2-2.SmartHR社のプロダクトマネージャー必須スキルと歓迎スキル
必須条件
・SmartHRのミッション・バリューへの共感
・自社プロダクトのプロダクトマネジメント経験
・企画書、要件定義書などのドキュメント作成能力
・エンジニアやデザイナーとの協働経験歓迎条件
SmartHRのプロダクトマネージャー募集ページ
・SaaSやBtoBのプロダクトマネジメント経験
・スクラム開発でのプロダクトオーナー経験
・SQLなどを使用したデータ分析業務の経験
恐らくSmartHR社の全職種に言えますが、SmartHRのミッション・バリュー共感はベースとして必要です。toB SaaSを提供する企業は作りたい世界観がはっきりとしているため、この共感がないと自らが作りたいプロダクトが合わないという不幸な結果になってしまいます。面接に望まれる方は、SmartHRのミッション・バリューを何度も読み込み、自分がなぜそれらに惹かれるかを言語化することをおすすめします。
もう1点特徴的なのが、企画書・要件定義書などのドキュメント作成能力です。SmartHR社は優秀なエンジニアやデザイナーが多いことが特徴で、彼ら彼女らとの協働も成果を上げる点で重要と言えるでしょう。どんなプロダクトを作るのかというWhatを定義する上で、現代のプロダクト開発でも重要になるのが古典的かもしれませんが「ドキュメント」です。SIerのように複雑・多大なドキュメントを作成するというよりも、「なぜそのプロダクトが必要で、どんなプロダクトを作りたいか」を分かりやすく・ハッキリと伝えることが求められます。特に近年のプロダクト開発では、リモートワーク中心のため非同期コミュニケーションが重視されているでしょう。ドキュメントはその場にPMがいなくても、あなたが作りたい世界観を伝えるものなので、その作成能力をSmartHR社では重視していると言えるでしょう。
3.SmartHRのプロダクトマネージャー平均年収
indeedの給与情報によると過去3年間に従業員やユーザーから提供された情報とindeed掲載情報に基づくと、SmartHRのプロダクトマネージャー職での平均年収は616万円とのことでした。メルカリのPdMの平均年収が750万円だったので、それに比べると100万円以上の開きがあります。ただこれらは公開情報から求められたものではなく、indeedが持っている情報を元にした推測値なのであくまでも参考値程度にしていただけると良いのではと思います。
SmartHRは未上場のため、社員の平均年収を掲載しておりませんが、年収・社員クチコミサイトのOpenworkを見ると大体600万円前後の年収と思われます。日本のプロダクトマネージャーの平均年収が750万円(indeed調査)なので平均値よりも安いと思われるかもしれませんが、SmartHRでは年収以外にストックオプション(SO)の制度を導入しており従業員にも還元しています。日本を代表するユニコーン企業であるSmartHRなので、現時点での年収は相場より低くても、上場時にそれ以上のお金を手にする可能性があります。
参考:株式会社SmartHRが時価発行新株予約権信託®を活用した 従業員向けインセンティブプランを導入
4.SmartHRのプロダクトマネージャー選考フロー
SmartHRのプロダクトマネージャー募集ページの内容を見ると、選考フローは以下となっています。
・書類選考
・面接2〜3回
・リファレンスチェック(back check)
・オファー面談
書類選考+面接2〜3回程度なので、一般的な選考フローと考えられるでしょう。一次面接:現場PM、二次面接:CTO・VPoP、最終面接:CEOという感じでしょうか。また近年増えてきているリファレンスチェックがあります。こちらは候補者の現職や前職の同僚・上司などに、候補者の評価(能力・性格・成果など)を入力してもらうもので、入力者に1時間程度の負荷をかけるため事前に協力の打診をしておくことをおすすめします。
4-1.書類選考のポイント
SmartHRの中途採用担当者が公開している情報によると、全職種での書類選考合格率は30%とのことです。日本を代表するユニコーン企業であり、応募者数もかなり多いことが想像されます。そのため、履歴書・職務経歴書から、SmartHRの採用担当者に興味を持ってもらえるようなドキュメント作成を心がける必要があります。
職務経歴書の書き方として、SmartHRが求める人物像に合致しているかどうかを意識すると書類選考合格率が高まります。例えば、SmartHRがPMに求めるものとして、「課題解決や業務改善が好き」というものがあります。職務経歴書の中で過去の仕事内容と成果を記載すると思いますが、その中で「社内業務改善により、社内メンバーの工数を削減した経験」や「顧客10人が抱えていた課題を解決するプロダクト企画を提案し、顧客の業務時間を効率化した」などを記載できるとアピールになるでしょう。
これらの経験はどうしても自分1人では自信を持って語れないものも多いので、ぜひ他者にレビューしてもらいながら完成させることをおすすめします。特に職務経歴書を初めて書く方は人材紹介エージェントに相談して、履歴書・職務経歴書をレビューしてもらいましょう。
4-2.面接のポイント
他社同様にSmartHRの選考でも面接は非常に重要な位置づけです。SmartHRでの面接はオンライン(zoom or Google Meet)で実施しております。
SmartHRの面接で聞かれるポイントはずばり「会社へのフィット(カルチャーフィット)」です。現場に採用の裁量があるため、現場(ここでは現職のPMやPMMなど)が一緒に働きたいと思えるかどうか、逆に言うと彼らにそういった思いを抱かせられるかどうかが重要になります。
プロダクトマネージャー募集ページの募集要項に記載のある、「応募資格」「求める人物像」を何度も読み込んだ上で、過去の経験からこれらに合致している人間であると伝えることが重要です。これらの募集要項から以下のような質問が想定されます。
- 仕様や要件を決める際に大切にしていることは何ですか?(ドキュメント作成能力)
- このプロダクトの、最も魅力的に感じる点は何ですか?(ミッション・バリュー共感)
- エンジニアとのコミュニケーションで工夫していることは何ですか?(協働経験)
- PdMに最も必要なスキルは何だと思いますか?(プロダクトマネジメント経験)
これらの質問に対して自分の言葉で語れるようにしておくことが大事です。ぶっつけ本番で面接に挑まなくてよいように、しっかりと事前準備をしておきましょう。
5.SmartHRのプロダクトマネージャー就職難易度
これまで紹介してきた通り、高い能力を求めており、さらに人気企業であるがゆえに選考倍率も高く、就職難易度は非常に高いと言えるでしょう。また成長中のSmartHRで働ける環境を用意しているからこそ、PMに求めるものもどんどん高まっていきます。PM職は新卒採用を現時点(2022/10)では行っておらず、中途採用のみ(第二新卒ではなく一定レベルのPM経験者)を募集しているのもそういったことが理由にあります。
しかし、これらの環境は自分自身の成長にとっては非常に良い環境とも言えるでしょう。これまでの経験を生かして活躍できそうで、かつSmartHRのミッション・バリューに共感している方々にとってはチャレンジし甲斐のある企業です。また優秀なPM陣を始めとしたメンバーと働ける機会はなかなかないので、少しでも興味のある方はチャレンジしてみることをおすすめします。
6.まとめ
SmartHRではプロダクトマネージャー求人に関する情報が多く掲載されており、それらのキュレーションという形でご紹介いたしました。
企業からのメッセージや、PMに期待すること、PM組織の実態なども公開されているため、会社が発信している内容はすべて確認しておきましょう。また、求人情報について公開されている情報も非常に多いため、それぞれのポジションを比較することが可能です。PMだけでなく、経営企画にも興味があるんだけどなとう人などは複数ポジションを確認しておきましょう。
また興味を持ったけど、まずは話から聞いてみたいという人はカジュアル面談も受け付けているようなので、以下のリンクから申し込みされることをおすすめします。