プロダクトのミニCEOであるプロダクトマネージャー(PdM)。
近年Web業界を中心にプロダクトマネージャーを設置する企業が増えており、未経験PMの採用やジョブチェンジなども事例が増えてきております。また過去に本ブログでも紹介しましたが、無資格でも働ける職種であり、誰でも挑戦できることが特徴です。
一方で今活躍しているプロダクトマネージャーの中には、過去に取得した資格を通じて、転職や年収UPに成功してきた人も多くいらっしゃいます。そこで本記事では、プロダクトマネージャーが取得しておくべき資格、資格の勉強法や難易度について解説します。ぜひご自身のキャリアアップや年収UPにつながる資格を取得してみてください。
目次
プロダクトマネージャーに求められるスキルとは
プロダクトマネージャーは無資格・未経験でもなれる
過去にも述べていますが、プロダクトの責任者であるPMに必要な資格はありません。プロダクトマネジメントという業務自体が、業界・所属企業・プロダクトの性質・関わる人によって異なるため体系的に学ぶ資格試験というものが作りづらいのかもしれませんね。
ただし、一部企業(特に外資系)では「情報工学の学位あり」や「修士号取得者」を募集要項の必須条件に書かれていることがありますので、一般的にはPMに必要な資格はないものの企業によって求められる資格は存在することは理解しておきましょう。
また、PMとしてキャリアアップするために、自身が目指す方向に合った資格を保持することで、現在不足している技術や知識を補う上でとても重要です。エンジニアと同じくPMは休日も勉強・研鑽により知識を獲得していくことを求められます。資格を取得する過程で新たな情報や知識・技術を取得できれば、自身の可能性の幅を広げることも可能となり、新たな転職先企業や年収UPにつながる可能性があります。
プロダクトマネジメントに必要な要素を見極めよう
プロダクトの責任者であるPMには、幅広い知識と明確な意思決定が求められます。例えば以下のようなスキルが求められます。
- 戦略理解
- 発想力・企画力
- ユーザー理解・考察力
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力(管理能力)
- リーダーシップ・意思決定
例えば、どういうプロダクトを作るのかを考える上では、経営・事業の戦略を理解する必要があるでしょう。(場合によっては自ら戦略を立案する必要があるでしょう。)また、発想力や企画力はプロダクトの立案面で重要です。
どんなプロダクトを作っていくかを自分だけでは作れないのでエンジニアやデザイナー、場合によっては経営層ともコミュニケーションを取る必要があるでしょう。どういった人と、どういうコミュニケーションを取った上で、自らが作るべきと思えるプロダクトを作って届けていくかはPMにとって重要なスキルです。
このようにPMに求められるスキルは幅広く、また難易度も高いものが多いため、今現時点で必要な・伸ばしたいスキルは何で、それを取得するためにはどんな資格が必要かを見極めていくと良いでしょう。
プロダクトマネージャーに必要な資格◯選
ここからはキャリアアップを狙うPMが取得すべき資格を解説していきます。いずれの資格も難易度が高いものですが、しっかりと試験対策をすることで取得可能なものばかりです。
1.ITストラテジスト
最初に紹介するのはIPA(情報処理推進機構)が実施するITストラテジスト試験です。
ITストラテジストは非常に難易度が高く、合格が難しい資格と言われています。近年のITストラテジストの合格率は15%前後で推移しており、IPAが実施する資格試験の中で最難関と言っても過言ではないです。
■ITストラテジストの受験対象者
ITストラテジスト試験(ST)、情報処理推進機構HPより
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者
高度IT人材であり企業の経営戦略に基づいて自社でのIT活用を推進できる人材となると、まさにプロダクトマネージャーが保持しておくべき資格と言えるでしょう。
2019年までは秋に実施していたITストラテジストですが、2020年からは4月(春季)の開催になっております。資格勉強の時間もかなり長い時間が必要と思われますので、開催時期は予めチェックした上で、試験対策に臨むようにしましょう。
問題形式 | 【午前】(多肢選択式) Ⅰ : 30問 Ⅱ : 25問 【午後】 Ⅰ : 4問中2問回答(記述式) Ⅱ : 3問中1問回答(論述式) |
試験時間 | 【午前】 Ⅰ : 50分 Ⅱ : 40分 【午後】 Ⅰ : 90分 Ⅱ : 120分 |
受験時期 | 毎年4月頃(1年に1回) |
合格率 | 13〜15% |
受験料 | 5,700円(税込) |
受験環境 | 全国の試験会場(大学等)にて |
HP | https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html |
2.プロジェクトマネージャー試験
続いて紹介するのは同じくIPA(情報処理推進機構)が実施するプロジェクトマネージャー試験です。
ITストラテジスト同様にプロジェクトマネージャー試験は非常に難易度が高い資格試験です。長年エンジニアとして活躍した人でも合格に苦労すると言われているプロジェクトマネージャー試験で、その合格率は12〜15%とITストラテジスト並に低い数字です。
■プロジェクトマネージャーの受験対象者
高度IT人材として確立した専門分野をもち、組織の戦略の実現に寄与することを目的とするシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトの目的の実現に向けて責任をもってプロジェクトマネジメント業務を単独で又はチームの一員として担う者。
プロジェクトマネージャ試験(PM) 、情報処理推進機構HPより
過去はウォーターフォール開発方式で要件を決めて厳密な設計を行い開発をしていく方法が主流でしたが、近年はアジャイルやスクラムといったモダンな開発手法を採用する企業も増えている中で、プロジェクトマネジメント(≠プロダクトマネジメント)に求められるスキルも多様化しているという背景があります。
プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーは違うから、プロジェクトマネージャー試験は要らないのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。確かに資格は不要ですが、資格を通して得られる知識や考え方はプロダクトマネジメントにも活かせられます。特に、「開発」や「マネジメント」に対して不安を覚える方は、どのようにシステムが開発されるかを身につけられるので、おすすめの資格です。
なお、2019年までは春に実施していたプロジェクトマネージャー試験ですが、2020年からは10月(秋季)の開催になっているので注意しましょう。
問題形式 | 【午前】(多肢選択式) Ⅰ:30問 Ⅱ:25問 【午後Ⅱ】 Ⅰ:4問中2問回答(記述式) Ⅱ:3問中1問回答(論述式) |
試験時間 | 【午前】 Ⅰ : 50分 Ⅱ : 40分 【午後】 Ⅰ : 90分 Ⅱ : 120分 |
受験時期 | 毎年10月頃(1年に1回) |
合格率 | 12〜15% |
受験料 | 5,700円(税込) |
受験環境 | 全国の試験会場(大学等)にて |
HP | https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/pm.html |
3.スクラムアライアンス認定プロダクトオーナー
認定スクラムプロダクトオーナー(Certified Scrum Product Owner、以下CSPO)とは、Scrum Alianceが提供する認定資格です。これまで紹介してきた2つの資格はIPA(情報処理推進機構)が実施している国家試験ですが、CSPOは民間団体が技能を認める認定資格である点が異なります。また国家試験資格と異なり試験型の資格ではなく、研修を受講することで認定される資格である点が特徴です。
■認定スクラムプロダクトオーナーの役割と責任
・スクラムチームの仕事に優先順位をつける
・プロダクトの優先順位付け
・作業の取捨選択、および承認
・ステータスについて顧客に最新の情報を提供し、フィードバックを得る
上記はCSPOに求められている役割と責任ですが、前提として「スクラムチーム」で活動するPO(プロダクトオーナー)であることがわかります。プロダクトオーナーという名前を用いていますが、プロダクトの優先順位に対して意思決定権があることから、プロダクトマネージャーと同義であると考えて良いでしょう。
そんなCSPOには「試験」はありません。認定団体が実施している研修に参加・受講することで資格を認定されます。試験勉強がないと安心した方もいらっしゃるかもしれませんが、最低でも丸2日の研修に集中して臨む必要があります。また研修中に宿題や課題を出されることがあり、研修内容の理解度は図られているので、それらが不足していると見なされると不合格になることもあるようです。
Agile Business Institute Inc.の公式サイトでは「実際にプロダクトオーナーを業務で実施している人、これからプロダクトオーナーになる人向けのトレーニングである」と記載されているので、一定程度PO業務(PM業務)に従事してから、自ら実践してきたことを確かめるという意味で取得するというのも良いかもしれませんね。
研修内容 ※一部の事例 | ・アジャイル概要説明 ・ロールプレイ - リリースゴールを決める - 契約をする - ビジョンを決める - ペルソナを決める - ストーリーを決める |
研修の運営企業 | Agile Business Institute Inc. 株式会社Odd-e Japan |
研修期間 | 2日間(Agile Business Institute Inc.) 5日間(株式会社Odd-e Japan) |
研修料 | 161,139円(Agile Business Institute Inc.) $3200(株式会社Odd-e Japan) |
4.中小企業診断士試験
最後に紹介するのが「中小企業診断士」という資格です。名前を聞くと、「診断士ってコンサルの仕事だからPMの自分はいらない」や「中小企業の支援をするとなると大企業のPMを目指す自分とは違う」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ビジネスとテクノロジーの架け橋を務めるPMにとっては持っておいて損はなけれど、得しかないが「中小企業診断士」です。
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。
中小企業診断士試験について、一般社団法人中小企業診断協会
中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。
このように定義されている中小企業診断士ですが、まず国家資格なので国から認定されるというのが大きなポイントです。また中小企業診断士は、経営コンサルに携わる方が多く保有している資格でもあり、経営視点でものごとを捉えることができるようになります。プロダクトのミニCEOであるPMならば、”プロダクトの経営”に携わる上で良いでしょう。
そんな中小企業診断士ですが、もちろん資格取得の難易度も高いです。1次試験(7科目選択式筆記)で合格率約20~40%、2次試験(4科目論述式、口述)は合格率約20%弱と。ストレート合格する確率は約4~8%と、これまで紹介してきた資格試験と比べてもかなり低い合格率であることがわかるでしょう。
しかし、1年や2年で仮に資格が取得できなかったとしても、経営視点でものごとを幅広く見られるような視野を獲得できたり、単一プロダクトではなく複数のプロダクトのポートフォリオでどう投資判断するかを考えるなど、中小企業診断士の資格試験勉強を通じて得られるものも非常に多いです。特にビジネス面(マーケティング、事業開発、企画力)のスキルを上げたいという方にはおすすめの資格です。
試験形式 | 一次試験:マークシートによる選択式の試験 二次試験:筆記試験と口述試験 |
受験時期 | 一次試験:8月上旬の2日間 二次試験:(筆記)10月中旬~下旬 (口述)12月中旬 |
合格率 | 4〜8% 一次試験:約20~40% 二次試験:約20% |
受験料 | 一次試験:13,000円 二次試験:17,200円 |
受験環境 | 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇の8都 |
HP | https://www.j-smeca.jp/contents/007_shiken.html |
参考情報 | https://www.tac-school.co.jp/kouza_chusho/chusho_sk_idx/chusho_shiken_guide.html |
一次試験(筆記試験) | 配点 | 試験時間 |
①経済学・経済政策 | 100点 | 60分 |
②財務・会計 | 100点 | 60分 |
③企業経営理論 | 100点 | 90分 |
④運営管理 | 100点 | 90分 |
⑤経営法務 | 100点 | 60分 |
⑥経営情報システム | 100点 | 60分 |
⑦中小企業経営・中小企業政策 | 100点 | 90分 |
二次試験(筆記試験) | 配点 | 試験時間 |
事例Ⅰ(組織・人事) | 100点 | 80分 |
事例Ⅱ(マーケティング・流通) | 100点 | 80分 |
事例Ⅲ(生産・技術) | 100点 | 80分 |
事例Ⅳ(財務・会計) | 100点 | 80分 |
二次試験の口述試験は、10分程度の口述試験であり、筆記試験出題内容をもとに4〜5問出題されます。
まとめ
これまでにプロダクトマネージャーが保有しておくとキャリアアップに有利な資格をを紹介してきました。豊富な知識と技術、責任を求められるプロダクトマネージャーですが、その分高い年収を得ることもできますし、やり甲斐のある仕事に就くことができるのもプロダクトマネージャーの魅力です。
PMに就きたい、さらにPMとしてキャリアアップをしていきたいという方は、ぜひ本記事で紹介した資格取得を目指してみてください。